近未来フォーラム

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講演レポート

研究紀要

04.研究紀要

研究紀要「DHU Journal」
論文発表会

デジタルハリウッド大学
メディアサイエンス研究所

研究紀要「DHU Journal」論文発表会では
「ご当地キャラ」から「ヘルスケアアプリ」などの実績を7つ紹介

デジタルハリウッドは、去る2018年11月22日(水)に「近未来教育フォーラム 2018 The Art into Future」を開催。複数のブースで、教育やアート、クリエイティブ、デザインなどに関する講演を行った。

デジタルハリウッド大学では、近年その成果を論文として発表するようになっており、毎年紀要を発行し、編集委員会にて査読をした論文や研究ノートを掲載している。その中のいくつかを「研究紀要『DHU Journal』論文発表会」で発表した。

ご当地キャラのSNS発信と支持の関係を探る

トップバッターは、デジタルハリウッド大学大学院 客員教授の野澤智行氏が発表した論文「ご当地キャラのSNS発信と支持の関係を探る―検索・Twitter書き込みと純粋想起に関する実証研究―」。これまでの「ゆるきゃら」や「ご当地キャラ」の変遷を振り返り、転機となった「ひこにゃん」のヒット理由をかわいいパフォーマンスやロイヤリティフリーといった要因に見出した。

一時のブームは過ぎたものの、今後の活動のヒントを提示すべく、SNSの書き込みと純粋想起の相関などを明らかにした。また、SNSだけでなく、マスメディアでの露出が大きな影響を及ぼしたり、有名人や企業・団体の発信が効果的だとまとめた。

大学講義のバックチャンネルでマストドンを利用

Twitterのようでありながら、分散型のSNSである「マストドン」。これを授業で生かそうという研究ノート「大学講義におけるマストドンの利用について」を発表したのはデジタルハリウッド大学 学士の奥村良磨氏。大学の授業の最中に、バックチャンネルとしてテキストコミュニケーションを実施して、授業だけの場合よりも学びが得られる可能性を探った。

アンケートの結果、「学習効果が高い」「バックチャンネルのやりとりが活発」の2軸を使った4象限による検証で、全体的に学習効果が高かったことがわかった。ほかの学生の意見を見ることで他社からの視点が得られ、それが学習効果へつながった可能性を示唆した。

デジペン工科大学のシンガポール校成功の秘訣

ゲーム分野で社会的評価の高いデジペン工科大学について発表したのは、デジタルハリウッド大学 教授の高橋光輝氏。研究ノートのタイトルは「デジペン工科大学シンガポール校の学位プログラムに関する考察」。

ニューヨーク大学シンガポール校が、学生が集まらず廃校になった事例を説明してから、デジペン工科大学シンガポール校が評価され成功している理由を分析。設立当初は学位を授与しない「私塾」であったことや、Nintendo of Americaとの提携などが挙げられるが、特にシンガポール工科大学と提携したことが要因を分けたとした。

「デジコレ」をナラティブのデザインに

デジタルハリウッド大学大学院の学事DHGS COLLECTION(以下、デジコレ)について発表したのは、デジタルハリウッド大学 大学院グループの大島志拓氏。修了課題制作の成果を学生がプレゼンテーションするもので、2015年度から物語性を導入。メインビジュアルやフライヤー、会場の設営といったメディア構成にテーマ性を取り入れた。それにより、デジコレは人気の学事となり、人が入りきれないほどになったという。すべてをエンタテインメントにするというデジタルハリウッド大学のコンセプトにぴったりと合うものになった。

サービス制作におけるフレームワーク活用の順序を明らかに

ウェブサイトやスマートフォンアプリのサービス制作において、そのフレームワークは体系化されている。「想定ターゲットプランニング」「ユーザー調査」「プロトタイプ検証」「リリース後のPDCA」の4つだ。ただし、どのプロセスをどの順序で実施するかは体系化されていない。株式会社電通の片山智弘氏は、論文「ウェブサイトおよびスマートフォンアプリケーションのサービス制作における、ユーザー理解のためのプロセスを判断するフレームワークの開発」において、その順序を決める研究結果を明らかにした。

さまざまなプロジェクトを、サービスをユーザーに説明しやすいかどうかという「理解のハードル」と、工数がどれくらいかかるかという「工数のハードル」を2軸にした4象限に分類し、それぞれどのプロセスを実施すればいいのかを発表。例えば、理解のハードルが低く、工数のハードルが高いサービスなら、まずユーザー調査から実施するのだ。本論文では「まず何をしたか」を分類したため、これからはプロセスをさらに細分化していく予定だ。

「おちゃないGO」のゲーミフィケーションで患者を健康に

これまでの医療に疑問を投げかけ、ゲーミフィケーションを取り入れて患者の健康を目指す論文「ゲーミフィケーションとヘルスケア」を発表したのは、お茶の水循環器内科 院長の五十嵐健祐氏。従来の医療は「なんで運動を辞めちゃったの?」「なんでもっと早く来ないの?」と患者に対して不親切だったと述べ、運動療法に介入できていなかったという。そこで「おちゃないGO」というスマートフォンアプリを開発し、患者に「歩く楽しさ」を提供。ゲーミフィケーション6要素を網羅したアプリにより、検査の数値がほぼ正常化し、薬の数が減った患者が現れたという。医療にデジタルを取り入れ、これからは「デジタルヘルス」として普及していく予定だ。

入学式を卒業制作の発表の場にしてエンタテインメント化

デジタルハリウッド大学の入学式について発表したのは、論文「『開かれた』入学式を目指して――Digital Frontier Grand Prix 2018での取り組み」を記したデジタルハリウッド大学 入試広報グループの小勝健一氏。この日は「論文に記載されていないことをプレゼンテーションする」とし、発表した。

デジタルハリウッド大学では、入学式が卒業生の評価発表の場を兼ねている。それにより、エンタテインメントになっているのだという。また、入学者の学習の動機付けにもなる。さらには、入学式に名だたる企業がスポンサーとして名を連ねているのもユニークだと説明した。これからも、入学者が学習を楽しいと思えるように広げていきたいという。

論文発表会は盛況に終了し。発表後も意見交換などが活発に行われていた。これからも、デジタルハリウッドでは、さまざまな分野での研究をすすめていく。